複数のクラスターへのアクセスを設定する
ここでは、設定ファイルを使って複数のクラスターにアクセスする方法を紹介します。クラスター、ユーザー、コンテキストの情報を一つ以上の設定ファイルにまとめることで、kubectl config use-context
のコマンドを使ってクラスターを素早く切り替えることができます。
備考:
クラスターへのアクセスを設定するファイルを、kubeconfig ファイルと呼ぶことがあります。これは設定ファイルの一般的な呼び方です。kubeconfig
という名前のファイルが存在するわけではありません。始める前に
Kubernetesクラスターが必要、かつそのクラスターと通信するためにkubectlコマンドラインツールが設定されている必要があります。 このチュートリアルは、コントロールプレーンのホストとして動作していない少なくとも2つのノードを持つクラスターで実行することをおすすめします。 まだクラスターがない場合、minikubeを使って作成するか、 以下のいずれかのKubernetesプレイグラウンドも使用できます:
kubectlがインストールされているか確認するため、kubectl version --client
を実行してください。kubectlのバージョンは、クラスターのAPIサーバーの1つのマイナーバージョン内である必要があります。
クラスター、ユーザー、コンテキストを設定する
例として、開発用のクラスターが一つ、実験用のクラスターが一つ、計二つのクラスターが存在する場合を考えます。development
と呼ばれる開発用のクラスター内では、フロントエンドの開発者はfrontend
というnamespace内で、ストレージの開発者はstorage
というnamespace内で作業をします。scratch
と呼ばれる実験用のクラスター内では、開発者はデフォルトのnamespaceで作業をするか、状況に応じて追加のnamespaceを作成します。開発用のクラスターは証明書を通しての認証を必要とします。実験用のクラスターはユーザーネームとパスワードを通しての認証を必要とします。
config-exercise
というディレクトリを作成してください。config-exercise
ディレクトリ内に、以下を含むconfig-demo
というファイルを作成してください:
apiVersion: v1
kind: Config
preferences: {}
clusters:
- cluster:
name: development
- cluster:
name: scratch
users:
- name: developer
- name: experimenter
contexts:
- context:
name: dev-frontend
- context:
name: dev-storage
- context:
name: exp-scratch
設定ファイルには、クラスター、ユーザー、コンテキストの情報が含まれています。上記のconfig-demo
設定ファイルには、二つのクラスター、二人のユーザー、三つのコンテキストの情報が含まれています。
config-exercise
ディレクトリに移動してください。クラスター情報を設定ファイルに追加するために、以下のコマンドを実行してください:
kubectl config --kubeconfig=config-demo set-cluster development --server=https://1.2.3.4 --certificate-authority=fake-ca-file
kubectl config --kubeconfig=config-demo set-cluster scratch --server=https://5.6.7.8 --insecure-skip-tls-verify
ユーザー情報を設定ファイルに追加してください:
kubectl config --kubeconfig=config-demo set-credentials developer --client-certificate=fake-cert-file --client-key=fake-key-seefile
kubectl config --kubeconfig=config-demo set-credentials experimenter --username=exp --password=some-password
備考:
kubectl --kubeconfig=config-demo config unset users.<name>
を実行すると、ユーザーを削除することができます。
kubectl --kubeconfig=config-demo config unset clusters.<name>
を実行すると、クラスターを除去することができます。
kubectl --kubeconfig=config-demo config unset contexts.<name>
を実行すると、コンテキスト情報を除去することができます。コンテキスト情報を設定ファイルに追加してください:
kubectl config --kubeconfig=config-demo set-context dev-frontend --cluster=development --namespace=frontend --user=developer
kubectl config --kubeconfig=config-demo set-context dev-storage --cluster=development --namespace=storage --user=developer
kubectl config --kubeconfig=config-demo set-context exp-scratch --cluster=scratch --namespace=default --user=experimenter
追加した情報を確認するために、config-demo
ファイルを開いてください。config-demo
ファイルを開く代わりに、config view
のコマンドを使うこともできます。
kubectl config --kubeconfig=config-demo view
出力には、二つのクラスター、二人のユーザー、三つのコンテキストが表示されます:
apiVersion: v1
clusters:
- cluster:
certificate-authority: fake-ca-file
server: https://1.2.3.4
name: development
- cluster:
insecure-skip-tls-verify: true
server: https://5.6.7.8
name: scratch
contexts:
- context:
cluster: development
namespace: frontend
user: developer
name: dev-frontend
- context:
cluster: development
namespace: storage
user: developer
name: dev-storage
- context:
cluster: scratch
namespace: default
user: experimenter
name: exp-scratch
current-context: ""
kind: Config
preferences: {}
users:
- name: developer
user:
client-certificate: fake-cert-file
client-key: fake-key-file
- name: experimenter
user:
password: some-password
username: exp
上記のfake-ca-file
、fake-cert-file
、fake-key-file
は、証明書ファイルの実際のパスのプレースホルダーです。環境内にある証明書ファイルの実際のパスに変更してください。
証明書ファイルのパスの代わりにbase64にエンコードされたデータを使用したい場合は、キーに-data
の接尾辞を加えてください。例えば、certificate-authority-data
、client-certificate-data
、client-key-data
とできます。
それぞれのコンテキストは、クラスター、ユーザー、namespaceの三つ組からなっています。例えば、dev-frontend
は、developer
ユーザーの認証情報を使ってdevelopment
クラスターのfrontend
namespaceへのアクセスを意味しています。
現在のコンテキストを設定してください:
kubectl config --kubeconfig=config-demo use-context dev-frontend
これ以降実行されるkubectl
コマンドは、dev-frontend
に設定されたクラスターとnamespaceに適用されます。また、dev-frontend
に設定されたユーザーの認証情報を使用します。
現在のコンテキストの設定情報のみを確認するには、--minify
フラグを使用してください。
kubectl config --kubeconfig=config-demo view --minify
出力には、dev-frontend
の設定情報が表示されます:
apiVersion: v1
clusters:
- cluster:
certificate-authority: fake-ca-file
server: https://1.2.3.4
name: development
contexts:
- context:
cluster: development
namespace: frontend
user: developer
name: dev-frontend
current-context: dev-frontend
kind: Config
preferences: {}
users:
- name: developer
user:
client-certificate: fake-cert-file
client-key: fake-key-file
今度は、実験用のクラスター内でしばらく作業する場合を考えます。
現在のコンテキストをexp-scratch
に切り替えてください:
kubectl config --kubeconfig=config-demo use-context exp-scratch
これ以降実行されるkubectl
コマンドは、scratch
クラスター内のデフォルトnamespaceに適用されます。また、exp-scratch
に設定されたユーザーの認証情報を使用します。
新しく切り替えたexp-scratch
の設定を確認してください。
kubectl config --kubeconfig=config-demo view --minify
最後に、development
クラスター内のstorage
namespaceでしばらく作業する場合を考えます。
現在のコンテキストをdev-storage
に切り替えてください:
kubectl config --kubeconfig=config-demo use-context dev-storage
新しく切り替えたdev-storage
の設定を確認してください。
kubectl config --kubeconfig=config-demo view --minify
二つ目の設定ファイルを作成する
config-exercise
ディレクトリ内に、以下を含むconfig-demo-2
というファイルを作成してください:
apiVersion: v1
kind: Config
preferences: {}
contexts:
- context:
cluster: development
namespace: ramp
user: developer
name: dev-ramp-up
上記の設定ファイルは、dev-ramp-up
というコンテキストを表します。
KUBECONFIG環境変数を設定する
KUBECONFIG
という環境変数が存在するかを確認してください。もし存在する場合は、後で復元できるようにバックアップしてください。例えば:
Linux
export KUBECONFIG_SAVED=$KUBECONFIG
Windows PowerShell
$Env:KUBECONFIG_SAVED=$ENV:KUBECONFIG
KUBECONFIG
環境変数は、設定ファイルのパスのリストです。リスト内のパスはLinuxとMacではコロンで区切られ、Windowsではセミコロンで区切られます。KUBECONFIG
環境変数が存在する場合は、リスト内の設定ファイルの内容を確認してください。
一時的にKUBECONFIG
環境変数に以下の二つのパスを追加してください。例えば:
Linux
export KUBECONFIG=$KUBECONFIG:config-demo:config-demo-2
Windows PowerShell
$Env:KUBECONFIG=("config-demo;config-demo-2")
config-exercise
ディレクトリ内から、以下のコマンドを実行してください:
kubectl config view
出力には、KUBECONFIG
環境変数に含まれる全てのファイルの情報がまとめて表示されます。config-demo-2
ファイルに設定されたdev-ramp-up
の情報と、config-demo
に設定された三つのコンテキストの情報がまとめてあることに注目してください:
contexts:
- context:
cluster: development
namespace: frontend
user: developer
name: dev-frontend
- context:
cluster: development
namespace: ramp
user: developer
name: dev-ramp-up
- context:
cluster: development
namespace: storage
user: developer
name: dev-storage
- context:
cluster: scratch
namespace: default
user: experimenter
name: exp-scratch
kubeconfigファイルに関するさらなる情報を参照するには、kubeconfigファイルを使ってクラスターへのアクセスを管理するを参照してください。
$HOME/.kubeディレクトリの内容を確認する
既にクラスターを所持していて、kubectl
を使ってクラスターを操作できる場合は、$HOME/.kube
ディレクトリ内にconfig
というファイルが存在する可能性が高いです。
$HOME/.kube
に移動して、そこに存在するファイルを確認してください。config
という設定ファイルが存在するはずです。他の設定ファイルも存在する可能性があります。全てのファイルの中身を確認してください。
$HOME/.kube/configをKUBECONFIG環境変数に追加する
もし$HOME/.kube/config
ファイルが存在していて、既にKUBECONFIG
環境変数に追加されていない場合は、KUBECONFIG
環境変数に追加してください。例えば:
Linux
export KUBECONFIG=$KUBECONFIG:$HOME/.kube/config
Windows Powershell
$Env:KUBECONFIG="$Env:KUBECONFIG;$HOME/.kube/config"
KUBECONFIG
環境変数内のファイルからまとめられた設定情報を確認してください。config-exercise
ディレクトリ内から、以下のコマンドを実行してください:
kubectl config view
クリーンアップ
KUBECONFIG
環境変数を元に戻してください。例えば:
Linux:
export KUBECONFIG=$KUBECONFIG_SAVED
Windows PowerShell
$Env:KUBECONFIG=$ENV:KUBECONFIG_SAVED